
任意売却 自己破産を語ろう
この8年間、私の身辺が変わっただけではなく、世の中全体が大きく変化しました。
2000年に民事再生法が施行されたのを皮切りに、企業の再生・再建のための数々の法律が生まれたこと。
経営の破綻した企業について、ようやく、倒産や回収という概念だけではなく、「再生」という概念も世間でも認められるようになりました。
このような社会の変化とともに、当社の再生スキームも刻々と進化しています。
サービサー法を利用して債務を無担保債権化するという手法も、8年前には不可能でした。
ありとあらゆる手段を使いこなして、より中小企業の再生をしやすいスキームを構築していくのが、私たちに課せられている使命でもあります。
しかし、限界も感じていました。
おカネ、法律、実務、心の問題です。
このなかの「おカネ」がネックとなって立ちはだかっていたのです。
事業再生に詳しくない人でも、民事再生法という法律の名前は聞いたことがあるでしょう。
大手デパートのSが申請したのをきっかけに、「痛みの少ない再建方法」として、中小企業の経営者にも注目を浴びてきました。
しかし、実は当社では、よほどのことがない限り民事再生法での再建を勧めていません。
それには三つの理由があります。
民事再生法の申立てにはおカネがかかります。
負債総額に応じて予納金を裁判所に納めなければなりませんが、その金額は負債額5000万円未満で200万円、5000万円事業再生にも立ちはだかるおカネという高い壁民事再生を申請すると、債務者の負担はかなりラクになります。
ただし、金融機関だけではなく、取引先の売掛金も債権カットの対象に含まれます。
取引先は、回収予定だった売掛金を一方的に圧縮されてしまい、手元に入ってくるのはわずかな金額になります。
その結果、取引先からの信用を失い、再生して事業を続けようにも取引を打ち切られてしまう可能性が高いのです。
月々の返済に苦しんでいる企業が、それだけの金額を用意するのは簡単ではありません。
この予納金を理由に、民事再生を断念する企業も少なくありません。
民事再生は、申請してから再生手続きが終了するまで最低でも半年以上はかかります。
以上の理由から、民事再生法は負債が大きくて苦しんでいる中小企業ほど利用しづらくなっています。
中小企業が迅速に再生するためにつくられたはずの法律が、結果的に再生を妨げているのは皮肉な現象です。
大手企業は民事再生法を利用して復活を遂げられるのに、中小企業は手を差し伸べてもらえない。
これでは、民事再生法ができる前と大差ありません。
そこで、当社では任意売却や会社分割などの手法を用いて再生を図ります。
これなら取引先との信頼関係を損なうことなく、また多額の予納金を支払う必要もありません。
経営者も、そのまま経営を続けられます。
民事再生法や会社更生法など、事業再生の手続きに入った企業に対して行うその間は金融機関の融資を受けられず、現金仕入れになるので、ある程度の運転資金が必要になります。
スポンサーを事前にみつけるか、DIPファイナンスを利用しないと、民事再生を利用するのはむずかしいでしょう。
一方で、債務超過の状態でスポンサーについてもらうと、借入れというよりは資本を出してもらうことになります。
そうすると経営者が退くよう求められる恐れもあります。
民事再生法の利点は経営陣が経営権をもち続けられるところにあるというのに、これではなんのために会社を守ったのか、わからなくなります。
また、当面の運転資金を調達するために中小企業再生支援協議会や自治体の融資を受けようとしても、融資がおりないときもあります。
おカネがあれば解決できることを、あきらめざるを得ない状況に直面し、歯ぎしりする思いでした。
おカネの問題さえ解消できれば事業再生スキームは次のステップへと踏み出せる。
常々そう考えていた私は、独自にセントラルマザーズ再生基金をつくることを思い立ちました。
しかし、ここにも大きな問題があります。
任意売却では不動産を買ってくれる協力者がみつからずに断念するケースも多いのです。
経営者が自宅や事業所を泣く泣く手放す姿は、ターンアラウンド・スペシャリストとしてみるに忍びないものです。
2003年春に設立された事業再生実務家協会に、私と役員の森田耕一朗が入会し、ほ再生ファンド自体は、ここ数年、日本でも急速に浸透してきています。
はじめは外資系のファンドが主流でしたが、政府が金融と産業の一体再生を打ち出してから、日本型のファンドも次々と誕生しています。
ただ、その多くは、大手企業や中堅企業を対象としているのが現状です。
中小企業向けの再生基金をつくりたい。
その思いだけはずいぶん前からありましたが、実現に向けて動き出したのは2003年に入ってからです。
2003年は、1年間で1600件以上の面談をこなしました。
債務問題で困っている経営者の方々が当社に足を向けるのと同時に、私たちの活動に対する社会的な認識も高まってきました。
独自の中小企業向け再生基金かのターンアラウンド・スペシャリストの方々と肩を並べるようになったのです。
8年目にしてようやくここまでたどり着いた、と感慨深く思います。
同時に、再生基金を立ち上げる時期が訪れたと、強く感じました。
投資家やファンド案件を手がけたことのある人にアドバイスをもらいながら、独自のファンドの構想を描き、実現に向け試行錯誤する日々が続きました。
そして2003年末、勉強会で経営者の方々に「来年はみなさんにプレゼントを差し上げます」と発表したのが「マイホーム基金」です。
中小企業向けの再生ファンドは、すでに経済産業省の外郭団体である中小企業総合事業団をはじめ、地方銀行などでも設立されています。
金融機関から過剰な債務に苦しむ企業の債権を買い取り、不採算事業の整理などによる再生を主導し、運転資金の融資を行うのが主な内容です。
当社でも、債務超過に陥った事業へのファンドと、不良債権化した利回り物件へのファンドを立ち上げようと考えていました。
その一環として、私たちがもっとも重要だと考えたのが「マイホーム基金」です。
多くの中小企業の再生を手がけてきて、自宅を守れた経営者と失ってしまった経営者とでは、目にみえて事業再生の成功率が違うことを実感していました。
自宅とは、経営者を支えてくれる家族の安息の場です。
再スタートの拠点を確保できない経営者は、立ち直るための足場がないのです。
任意売却で協力者を得られなくても、マイホーム基金が不動産を買い取ることで、担保になっていた自宅が競売にかけられるのを防げます。
ファンドとは、そもそも資本・基金という意味であり、投資信託をさすこともあります。
しかし、ファンドと聞くと、外資系ハゲタカファンドなどを連想し、あまりいいイメージをもっていない人もいるでしょう。
代表的な例が、破綻処理のために7兆円を超える公的資金をつぎこんだ旧・日本長期信用銀行を、アメリカの投資会社が3億円で購入したケースです。
不良債権に群がり、安く買い叩き、企業を立て直して高く売るのが目的なので、いいイメージを抱かれなくても当然です。
しかし、問題は運用の仕方であり、ファンドそのものに問題があるわけではありません。
セントラルマザーズ再生基金は、従来の意味どおり「基金」と呼ぶのがふさわしいと思います。
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